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YKK丸屋根展示館
受賞:2009年グッドデザイン賞 / 2009年ベルカ賞

引き算で足し算をする
21世紀の日本は、そしてやがて世界も縮小を基調とせざるを得ず、建築も都市も縮小のデザインとして構 想すべきである。縮小の原因は直接的には人口減少と地球環境問題の両方であるが、根本には人間が、人間の夢をひたすら追求してきたことがある。物質と人間活動で飽和した地球には抑制と調整が避けられない。
縮小の時代の環境整備のデザイン的課題は環境をランドスケープとしてデザインすると表現できる。つまり、地形も植栽も構築物も全て等価に人間のための環境として全体をデザインの対象とする。建築の設計論で考えれば、既存の構築物も含めた環境を対象として、あるものを生かすことが大きな課題となる。そのために引き算という手法が浮かび上がってくる。物資的付加をせずに空間の価値を高める、言い換えれば、引き算で足し算をするという、デザインだけができるマジックは、シュリンキングニッポンでの環境デザインの作法の一つである。

YKKセンターパークの将来像
(展示館は初期案)




RC 造の工場のリノベーション 社内で「丸屋根」と通称されてきたRC造平屋建ての工場群は、当初ファスナーの基布の紡績工場・織機工場として、昭和33〜34年に竣工し、今や黒部工場で最古参の工場である。
この特徴的なシルエットをもち、いまや会社にとっても社員にとっても思い出深い記念碑である。RC造の工場建築を生かして、展示館として整備することになった。
記憶を継承、保存する意味からも、そして経済的な理由からも、最小の改変で新しい生命を吹き込むことが、この計画に求められた。 そのために、計画着手時に残っていた約40ベイ約12,000m2の構造物の一部8ベイ約3,000m2だけを残し、残りは除却した。
これはセンターパークのランドスケープ的観点から決定された。 次に、残した部分から屋根の一部を取払って中庭を作り、耐震補強を施しながら壁の一部を撤去し、元の工場にはなかった開放性を生み出した。基本的に引き算のデザインを進めた

中庭を見る

最初に古い史料の掘り起こしを行なった。 幸い創建時の図面や写真が保存されていて、構造補強計画立案に役に立った。 引き算のデザインでは、切り取りかたにデザイン的表現が鮮烈に表れるので、当然構造的配慮をしつつ、過去の形を暗示する開いた形になるように切断位置を決めた。

既存の骨組みはRCのラーメン骨組みにコンクリートシェルを載せた形である。壁面はコンクリートブロック造なので、不足する耐震性はコンクリートブロック壁をRC造の耐震壁に置き換えることで補強した。 ただ、開放的な壁面も多く、鋼材で補強した。鋼材の柱や筋交いはオリジナルの建物には無い要素なので、デザイン的には既存建物と対比的に扱った。

エントランスポーチ構造の屋根は耐震補強の鋼材とともに、足し算のデザインである。既存棟の凸形のボールト型のシェル構造に対比して、鋼板による懸垂構造で凹形の形態を用いることで古い形態に対する敬意を表現しつつ存在感を主張した。エントランスポーチの機能は、もともと離れて建っていた二棟の間に新しく作られ、両者への入り口であると同時に渡り廊下でもある。

オリジナルの内部照明は、全般照明を意図したもので、天井から吊られたレースウエーに逆富士型の反射板付き器具で3本の蛍光管が点灯できるタイプであった。今回の機能では、このような全般照明は不要であり、同種の照明器具既に供給されていない。そこでボールトの空間性を引き出す専用の器具をYKKのアルミ押し出し技術を使って開発した。

妻壁側に設置された空調機からの吹き出し口は、 壁面と連続したデザインとした。


森に身を沈める文化・厚生施設 黒部事業所はYKKの製造と技術の中核拠点であり、会社の発展に合わせる様に用地の拡張と工場の増床を行なってきた。しかし、世紀が変わる頃から生産ラインの一部が海外に移転されるようになり、工場敷地に空きが出来てきた。そこで、工場の正門付近に森を育て、小さな文化・厚生施設を整備することになった(YKKセンターパーク構想)。 森の整備は一種の企業の社会貢献の新たな形として構想され、苗木から育てて郷土の植生(潜在植生)を再生する。30年も経てば、照葉樹を中心に地域固有な樹種が混じる深い森が日の光を浴びて輝き、そのなかに建築はひっそ りと身を沈めているはずである。 森は市民に開かれた公共性をもった場として、また、企業の精神的シンボルである。そのなかに、全社員の健康情報の管理と黒部地区の社内診療所を兼ねた「健康管理センター」、「古御堂守衛所」、ソフトボールコートなどが整備され、センターパークの中核施設として「丸屋根展示館」が企業の技術開発史の展示館として企画された。

全体アクソメ図
YKK丸屋根展示館
YKK Corporation Maruyane Hall
Renovation of a factory shed from the 60’s through subtraction
受賞:2009年グッドデザイン賞 / 2009年ベルカ賞
所在地:富山県黒部市
用途:産業史料館
構造設計:SDG
設備設計:総合設備計画
景観設計:オンサイト計画事務所
構造:RC柱梁構造に鋼製柱とRC壁による耐震補強
規模:地上1階
建築面積:3141.33
延べ床面積:2992.55
施工:第一建設、黒部エムテック
竣工:2008.9
写真:北嶋俊治