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集落の住居
​築117年の古民家改修

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北側近景。南北方向に抜ける開口部は改修前の形式を継承している。南側の緑の風景を南北のガラス越しに透けて見えるように改修した、

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東側外観。寺や神社を中心に細い路地が巡る集落に建つ築117年(明治40年)の民家改修。石垣や生垣、井戸下屋、玄関ポーチなど複雑なボリューム配置は既存によるもの。それらを丁寧に残し、屋根のデザインとした。屋根は耐震性を高めるため重い既存瓦屋根から軽量なガルバリウム鋼板一文字葺きに葺き替えた。

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既存の鴨居と欄間は構造的に有効なため残し外壁ラインは耐震壁として改修した。天井面は中央部に設けた間接照明により反射を促すため、白い天井としている。

吹抜空間

築117年の明治40年に建てられた民家の改修である。我々が訪れたとき平屋だと思われたが、2階部分が存在し、建築面積の半分以上は吊り天井により塞がれていた。そこで吊り天井を取りやめ既存木架構が見えるよう吹抜空間を作り出し、東西方向に掛け渡された丸太梁の上に間接照明を配置し切妻型の天井面を照らし上げた。我々が行なった意匠的な手法はこの吹抜空間の創造の一手のみであり、耐震改修と断熱改修に費用を割いた。

耐震改修

自治体が行なっている「木造住宅の耐震診断」を実施したところ、「倒壊する可能性が高い」と診断された。耐震改修による自治体の補助金を得るために「一応倒壊しない」以上の耐震改修が必要である。まず屋根を瓦屋根から軽量なガルバリウム屋根に葺き替え、部分的なジャッキアップで可能な部分基礎の採用を行なった。南北に抜けのある開放的な既存間取りを継承し耐震壁を適切に配置し、特徴である欄間部分は構造的に有効なため残していった。

その結果、先に説明した吹抜空間に帯状の欄間がグリッド状に浮遊し、水平面剛性は鋼製ブレースで軽やかに仕上げた。

断熱改修

外壁ラインは全て外断熱方式を採用し集落の街並みと合わせた黒い焼杉とした。構造壁部分にはさらに壁内充填断熱とし玄関土間とリビング寝室間は室内間であるが壁内充填断熱とした。天井面と床面も断熱している。開口部に関してはアルミ樹脂複合サッシに施主作成の厚手テキスタイルカーテンを設置した。夏季の猛暑はエアコンに頼ることになるが、エアコンをつけたままでも上部の熱気を排出するため西壁面頂部に高密閉電気シャッター式換気扇を設け中間期はロフト東面に縦滑り出し窓を2箇所設置し空気の循環を生む。冬季は薪ストーブを活用し、天井面に籠った暖気をシーリングファンにより循環させる。念の為ガス式床暖房も設置してある。

間取りの変更はほぼ行なっていないため、改修というよりリフォームに近いかもしれない。

設計期間3年、施工期間1年という住宅としては時間をかけ施主、設計者、施工者で常に話し合いを行い一つ一つ丁寧に紡いでいった経緯がある。完全ではないが性能向上から逃げない古民家改修を実現できたのではないかと考えている。

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照明計画 暗くなりがちな古民家改修において、天井面を明るくする間接照明のみで充分な照度を得ることができる。遠藤照明のsyncaを取り入れスマホで調光調色が可能であり、雨の日でも天空光が降り注いでいるような照度を得ることができる。勿論、スポットライトや照明を付けないなど選択ができる。

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リビング西側内観。既存の鴨居と欄間は構造的に有効なため残し外壁ラインは耐震壁として改修した。天井面は中央部に設けた間接照明により反射を促すため、白い天井としている。正面の食器棚は既存のもの。

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改修ならではの複雑な木架構が見える玄関土間内観。元々土間の台所であった緑色人造大理石の調理台を残している。傷んだ既存柱は部分的に新規柱材と継ぎ、残す方針とした。

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2階ロフト内観。改修前まで上写真のカーペットタイル部分まで床板があり、それより西側は吊り天井となっていた部分に鋼製ブレースを設け、吹抜空間とした。天井内の暖気をシーリングファンや妻面に 高密閉電気式換気扇を設置し、循環と流れを作り出す。ロフトの手すりはSUS6φのワイヤーロープ。正面のソファとガラス台は既存の家具を利用しファブリックを交換している。

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短手断面詳細図

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長手断面詳細図

集落の住居

所在地/東海地方

主要用途/専用住宅

家族構成/夫婦2人

 

設計

アプルデザインワークショップ 担当/大野秀敏 江口英樹 山本真也

構造

造家工房 担当/亀井俊博 森下未沙紀

 

施工

造家工房 担当/亀井俊博

大工棟梁 担当/萩原 一輝

屋根

株式会社 ガイア  担当/村瀬

左官 和左官 担当/稲垣

木製建具 松永木工所 担当/松永

金属製建具 有限会社 中央アルミ住器 担当/古川

解体 マイヅル建設 担当/酒井

外構 穂積工業 担当/穂積

電気

担当/山口哲平

設備

株式会社 テラビックキョーワ 担当/国見川構造・構法

主体構造・構法 木造*自治体木造住宅耐震診断プログラム・補強プログラムを使用し決定

基礎

鉄筋コンクリートベタ基礎 一部玉石基礎

 

規模

階数

地上2階 

軒高 4,000mm 最高高さ 6,850mm

敷地面積

824.13m2

建築面積

148.83m2

(建蔽率28.54%蔵+倉庫+外部WC含む 許容70%)

延床面積

180.39m2

1F:145.83m2 2F:34.56m2

(容積率41.63%蔵+倉庫+外部WC含む 許容200%)

工程

設計期間

2020年1月〜2023年3月

工事期間 2023年4月〜2024年4月

敷地条件

地域地区

市街化調整区域 法22条地域内 用途地域指定なし

 

道路幅員

北4.0m 駐車台数 2台

 

外部仕上げ

屋根/ガルバリウム鋼板 一文字葺き

外壁/焼杉張り

開口部/アルミ樹脂複合サッシ  制作木製建具

 

内部仕上げ

リビング 

床/ウォルナット複合フローリング  

壁/左官塗り ラワン合板柿渋

天井/プラスターボード壁紙

家具/制作

浴室

床/ハーフバスユニット1616(TOTO)

壁/バスパネルEX

天井/バスパネルBTJ

脱衣室

床/ビニル床タイルt3mm

壁・天井/プラスターボード壁紙

寝室 パントリ

床/ウォルナット複合フローリング  

壁 天井/プラスターボード壁紙

 

設備システム

空調

暖房方式/薪ストーブ ガス式床暖房 エアコン シーリングファン

冷房方式/エアコン シーリングファン

換気方式/第3種換気方式

給排水 給水方式/上水道直結

排水方式/下水道直結

給湯

給湯方式/エコジョーズ

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