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鍋島整形外科

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鍋島整形外科はスポーツ整形外科を標榜する診療所である。
鉄骨造の新棟は、既存のRC造(以下北棟、延べ床面積約635㎡、2016年竣工)の診療所に増築する形で計画された。北棟は交通量が多く、地形的な理由から二階レベルを横切る県道(幅員約30m)に面し、なおかつ内部にMRIやレントゲンなどの検査機器を擁することからRC造を選んだ。当時は新棟の計画は想定されず、診察部門も含んでいた。しかし、その後、隣接する木造の本院の敷地を拡大して診療体制の充実をはかることになった。その結果、北棟と新棟が繋がり、延べ床面積は合わせて約1200㎡となり、環境条件も異なる二つの地域にまたがる複合体になった。

新棟の計画拡張計画においては、北棟の一階の検査部門は残し、診療部門として使われていた上階は職員の休憩室等に改修し、診療部門を新棟に移した。診療業務の中断がないように二期に分けて工事ができる様に計画した。
室配置では、一階に診察室と物理療法を中心としたリハビリ部門の一部、二階と屋上に運動療法を中心としたリハビリ部門を置いている。わかりやすく表現すれば、一階は患者は動かず施術を受ける場所、二階は患者自身が動くことで治療効果を得る場所である。

二種類の外皮

このようなことから、一階のボリュームと二階のボリュームでは外皮の性格が異なる。一階は診察や施術があり外部に対して閉鎖的なければならず、また、小さい部屋に分割する必要があるので、一階のボリュームをガルバリウム鋼板で覆った。一方、二階は患者が動くことが治療の一部になり運動施設的な性格が強くなるので、開放感があり明るい空間が望ましい。床の使い方の自由度を確保するために、柱を細くし、可能な限り壁面を採光面として。そこで断熱性と採光性に優れた中空ポリカーボネートパネルで二階のボリュームを覆った。中心的なボリュームが整形になる様に垂直動線を外に出したうえで、狭い敷地のなかで、さまざまな条件を満たすために、一階と二階のボリュームを水平にずらせるというデザイン戦略を採った。これは北棟からの継承である。新棟では一階と二階をずらすことで、北側の隣地斜線への対応と南側の駐車スペースの確保をしている。

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まちを縫うように繋ぐヴォリューム配置

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2階リハビリ室。柔らかい乳白の光が全体を包み込む。水平スリット窓から街の様子と通風を取り込む。

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断面詳細図

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1階から屋上まで続く屋内階段。

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駅に近い住宅地の角地に建つ。 診療所の活動が街へと溶け込んでいくファサード。

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西立面図

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南立面図

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夕暮れ時の外観。1階が診療所、2階がスポーツリハビリ、屋上広場へと繋がる。

旧棟

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計画の概要と周辺環境

・地域に根付いて30年以上親しまれている一般整形外科に加えスポーツ整形外科を 専門とする診療所です。

・既存棟は木造で築30年以上経過しており、患者数の増加への対応や診療内容の充 実化のため、北側の隣地を購入し、そこに増築する計画となりました。

・既存棟は、今回の増築にあわせて改修を行いました。連絡通路によって既存棟1階と 増築棟1階は結ばれています。

・スポーツ医療のみならず地域スポーツの振興にも力を注いできた院長は、増築棟を 新たな交流の拠点とする構想を持っています。

・敷地周辺は第一種住居地域であり中低層の住宅地です。一方、前面の道路(ゆりの 木通り)は駅につながり交通量も多く、ロードサイド的な風景が広がっています。住宅地の風景になじみつつも、道路を行き交う人々にも存在感のある建築を設計で意 図しました。

・境界線まで迫る隣家と快適に共存できるように「接し方」を工夫しました。

各階の特性を反映した箱をずらして積み上げる

・1階にMRIやレントゲンといった検査室を集中配置しました。2,3階では西側にトイレやシャ ワー等をまとめ、リハビリ室とメディカルフィットネス室をワンルームとして確保しました。 ・各階で異なる階高を設定しました。1階は検査装置のために十分な階高を確保しました。2

階では主に理学療法が、3階では主に器械運動が行われるため、北側斜線制限を満たしつつそれぞれ天井高を最大限確保しました。

・それぞれの階の箱が少しずつずれた構成とし、シンプルでシンボル性の高い外観を実現しました。

・屋上はリハビリに加え、院長の構想であるスポーツ医療や地域スポーツ振興の交流の場としても使えます。四周をエキスパンドメタルで囲み、柔らかい箱を医院のシンボルとしました。

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建物名称:鍋島整形外科新棟

所在地:千葉市中央区松波4-23-2

主要用途:診療所

建築主:株式会社アミカル

設計:アプルデザインワークショップAPLdw

担当/大野秀敏、江口英樹(**)、山本真也、劉ジェシー

施工:宮前建設

構造・構法:鉄骨造

延床面積:808.92m2

設計期間:2019年12月〜2021年1月

工事期間:2021年2月〜2022年6月

主な外部仕上げ

屋根:ウレタン複合防水(UPM-10ダイフレックス)

外壁:カラーガルバリウム鋼板

開口部: 制作スチールサッシ フッ素樹脂塗装

主な内部仕上げ:

床: 長尺塩ビシートt2(ホスピリューム 東リ)、長尺塩ビシートt4.5(アリーナフィット 東リ)

壁:PB t12.5 AEP

天井: 高圧木毛セメント板、岩綿吸音版

照明:リニア32(遠藤照明)

建物名称:鍋島整形外科旧棟

所在地:千葉県千葉市中央区

用途:整形外科医院

設計:アプルデザインワークショップ

構造設計:小西泰孝建築構造設計

設備設計:総合設備計画

施工:山庄建設

建築面積:124.07

延べ床面積:635.65

構造規模:RC造1階建

竣工:2005.7

写真:北嶋俊治

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