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K-HALL

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K-HALL は富山県黒部市に整備された YKK グループの単身寮 K-TOWN( 新建築 2017 年 8 月号掲載)の共用施設 である。

学生寮であっても社員寮であっても多くの独身寮は、寮生の居室と食堂や共同浴 室などの共用諸室が複合した施設として計画され、一画の団地を形成するのが普通であった(ここでは、このような寮を「団地型の寮」と呼ぶ)。これに対して、設計者が K-TOWN で提案したのは、寮の居室 4室をまとめて一つの小規模共同住宅とし、食堂やラウンジなどの共用施設は居住部分から切り離して街なかに出し、寮生も町の人も利用できる施設とするものであった(「まちなか型の寮」と呼ぶ)。  K-HALL は、そのなかの共用施設にあたる。
「団地型の寮」の共用施設では、利用人数が限られる一方で、夜勤を含む様々な勤 務体制の社員に対応できるよう営業時間が長いため、稼働率が低いという問題がある。また、小さい町では、買い物の場所や集まれる場所が欲しくても、商業ベースでは立地が困難である。
この 2 つの課題に対する両得の回答が、 寮の食堂やラウンジをまちなか施設として運営することである。そうすれば、寮の経営も楽になり町の人にも喜ばれる。

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K-town 全体配置図

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航空写真 線路沿いにK-HALLが見える

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チューブの曲がり角にダイナミックな内部空間が生まれる

チューブが絡まり合ってできる

ダイナミックな内部空間と外観

新幹線の新駅ができ、自家用車依存社 会化が進むなかで昔の面影はないが、黒 部駅は、かつては特急も停車した北陸本 線の駅であり、街の玄関口であった。 K-HALL は、単に内部機能を満足させ るだけではなく、地域のシンボルとして の役割を引き受けるべきだと発注者も設 計者も考えた。K-HALL は駅広に面する だけでなく、プラットフォームからも含 めて全方位を公的な視線に晒されている。

アーチの縦半分を断面とするチューブ(管)を三本用意して、それを組み合わせて構成し、複雑な要求に応えることを目 指した。ラウンジ(2階)とエントランスホールおよびカフェ(1階)が入る チューブは、90度に折り曲げ、片方を 北に片方を東に向け、外部には北東隅に ホールへの小さな入り口広場を囲い込み、 内部には奥行きの深い洞窟的な性格をつ くり出した。これにマルチホール(2階) とコンビニ(一階)を入れるチューブを 背中合わせに並べ、駅前から見ると双葉 のような形にする。

チューブの端部は開放されているので 駅広に向かって内部の活動が露出される。 二階建てとはいえ高さは 12m あり、独特な外形もあいまって強い存在感を示し、 駅前の風景を一新している。全面ガラス 張りの硬質なファサードは、昼は駅広の車や空を映し小都市の駅前に現代的な香りを呼び込んでいる。

夜ともなれば一階 のカフェやコンビニ、二階のラウンジや マルチホールの内部でそれぞれの活動と 時間を過ごす人達の姿が、個性的な照明 によって浮かび上がる。人気も少なかった駅前に活気をもたらしてくれることが 期待されている。

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三本のチューブで構成された K-HALL

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杉板の「突っ張り嵌め」で形成 した内部空間

半アーチ型の内部空間に明確な性格を 与えるために、内壁と天井は全て杉板張 りとした。アーチの曲線は一つの円弧で はないうえに、平面的にも一部は円弧に なるので、その内面に杉板を張ろうとす ると下地の形状は極めて複雑になる。そ こで厚さ5ミリに挽いた杉板(富山県産) を反らせ、両端を鋼製の溝(白く塗装) に差し込んで作り出した。杉板の反発力 を利用しているので「貼る」というより

「突っ張り嵌め」と言うべきである。設計 段階から原寸モックアップを準備して工 法と仕様を検討し、スムーズな施工に繋 げた。これによってできる小さなアーチ が、大きなアーチ断面のチューブの内壁 を細かく分節し、内部に波打つリズムを作り出すことができた。

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黒部駅前から K-HALL をみる

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1階平面図

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2階平面図

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2Fラウンジより黒部駅前の広場を見る

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縦軸回転木製遮光ルーバー

マルチホールは、駅広に向かって最大 6.9m の高さの半アーチ状に開き全面ガ ラス張りである。ガラスは環境性能の高い熱反射ガラス入りの複層ガラスを用い ているが、ここで開催される様々な集まりによっては、外光を遮蔽しなければならないこともある。しかし既製品のカーテンやブラインドでは開閉ができないので、新たに縦軸回転の木製ルーバーを開発した。 足下に収納された歯車とチェーンによって7枚のルーバーが連動し、一斉に向きが変えられる。ベニヤ板で作られた ルーバーには細長い孔を開けてあるので、 閉めたときに細かい光の模様を、昼間は内部に夜は外観に作りだしている。プロジェクターの性能が向上した現在、真っ暗にするより快適である。 火災時には、消防隊がこのガラス面から建物内に進入するので、ルーバーは消火活動の邪魔になってはならない。丈夫 てかつ壊しやすい形状という難題の回答を求めて、設計者、施工管理者、金属加 工者、木工者が手を携えて試作に試作を重ねて漸く完成したのが今の形である。

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駅前広場から K-HALL を見る

K-HALL

発注者:YKK 株式会社
設計:建築・監理 アプルデザインワークショップ

構造: MID 研究所
設備 :総合設備計画工程
設計期間: 2014 年 4 月~2016 年 11 月 施工期間 2016 年 12 月~2017 年 7 月

施工:
建築 :松井建設株式会社
空調・衛生: 中央管機カクユー
電気 :中西電気
敷地条件 :地域地区 工業地域 準防火地域 道路幅員 東 11m

規模:
敷地面積 676.59m2
建築面積 393.60m2
延床面積 614.82m2
     (1 階 :334.46m2 / 2 階 :280.36m2) 建蔽率 58.17%(法定最大:60%) 容積率 83.84%(法定最大:200%)
階数 地上 2 階

寸法:
最高高 12040mm

軒高 11770mm
階高 3700mm
天井高 1 階 2600mm, 2300mm     2 階 ラウンジ:5750mm,
       マルチホール:7110mm        ミーティングルーム:5760mm,
廊下:2400mm,トイレ:2600mm

構造
主体構造 鉄骨造 杭・基礎 ラップルコンクリート 独立基礎


外部仕上げ
屋根 ガルバリウム鋼板一文字葺き 外壁 湿式外断熱工法 左官鏝押え仕上    (StoJapan:Sto Therm Classic) 開口部 アルミカーテンウォール     (YKKAP:SYSTEMA9201c・9211c)     アルミサッシ (YKKAP:EXIMA31 S-5)     自動ドア (YKKAP:EXIMA51e S-1)

内部仕上げ
カフェ客室 (1 階 )
床 長尺シート
壁 県産材杉板 t5 バトン艶あり塗装
天井 PB EP-G

厨房 (1 階 )
床 長尺シート
壁 タイル
天井 PB EP-G

エントランスホール (1 階 )
床 スレート
壁 PB EP-G
昇降路壁 StFB グレーチング
天井 PB EP-G ラウンジ・マルチホール・ミーティングルーム (2 階 ) 床 タイルカーペット
壁 PB EP-G
天井 県産材杉板 t5

外構コンクリート洗い出し

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