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フロイデ彦島

Freid Hikoshima

Collective home for the elderly with a soothing channel breeze

awards:BCS賞 / 医療福祉建築賞2007​ / 2007日本建築大賞ファイナリスト

フロイデ彦島は、老人保健施設の区分で言えば、グループホーム(18室2ユニット)とケアハウス(個室46室6ユニット、内2室が夫婦対応)が複合した施設であり、いずれも公費の補助が事業である。

特に後者は心身ともに健康な入居者が想定されており、食堂などの共用設備もあり、言ってみれば老人たちが共同生活する寮である。

階別の構成は、大きい棟の一階に施設全体の共用諸室(食堂、居間)と地域施設(デイサービスセンター、防災拠点型地域交流スペースなど)が置かれ、その上の2層が居室である。

小さい棟では3層とも居室が入っている。

居室は一部夫婦用の大きい部屋を除いて原則個室で、9室の個室が一つのケア単位を作り、それぞれが共用施設としてキッチン設備のある居間と浴室などを持っている。

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人と自然の気配が感じられる空間構成

我々の工夫は、平面構成において2重の入れ子構造にしたことにある。中庭と食堂とが絡み合った空間を核にして、その周辺に中庭に面して各グループの共用空間を配し、それを赤い壁で囲い込む。その外に白い個室空間が取り巻く。白い空間が外部と接する場所であるバルコニーの一部には大きな白い布が張られている。

ケアユニットは、一つの秩序であり、ある意味では管理の効率のためである。適正な料金と質の高いケアのために必要である。小グループは居住者が帰属感を抱き易く、心の安寧を得やすいというメリットがある。しかし、同時に小グループは、擬似的な家族を構成するために人間関係の緊張もまた避けられない。

ここに、60人余の人達が一つの場所で共同生活するメリットが生まれるのだと思う。複数のユニットがあれば、自分の属するグループ以外の入居者と触れ合える機会が得られる。また、この施設を運営する松濤会は積極的に地域に開こうとしている。ボランティアの活用、施設の開放を積極的に展開している。それらの人との触れ合いも重要である。それゆえ、段階的な空間構成  「個室-廊下-グループ共用-中庭-施設共用」を明確にするだけでなく、片方で視覚的、心理的に他のユニットと触れ合える可能性を建築が用意することが必要である。この建物全体で四つの中庭に面する各グループの共用空間に入ると、そこは赤い壁に囲まれ、中庭を透かして他の赤い壁に中にいる人達の様子や、館全体の活動の様子が目に入る。窓を明ければ話し声が聞こえてくる。同時に、中庭があることで、建物の中央部にある共用空間にいても、赤い壁に穿たれた開口を通して海の気配が感じられる。ここに、どこにいても人と自然の両方の気配が感じられる場が現出している。日本語の「気配が伝わる」という語は、ある種の空間の透明性を言う優れた用語と言ってよい。しかし、これまでの透明性は専ら視覚に偏っていた。例えば、透明性に関するコーリン・ローによる有名な二分類「ガラスによって得られる実の透明性と面の重なりによって暗示される虚の透明性」もそうである。建築が、人と空間との全感覚的な関係を確かなものとし、時にはそれを補強する役割を持つのであれば、透明性の概念にも視覚ばかりでなく、聴覚や嗅覚など他の感覚要因も折り込むべきではないだろうか。

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2.風景に身を沈める

施設名の一部ともなっている彦島は所在地を指し、下関市の端にあって、今では埋め立てによって殆ど気付かないが、本州と九州の間の小島である。敷地は関門海峡に面している。遠景としては、対岸に北九州市の重工業の工場群を望むことができ、その間を大小の船舶が頻繁に往来している。日本の20世紀の成長を支えた景観である。しかも彦島の頂部に位置する為に、最上階からは、日本海側も瀬戸内海側も視野に入る絶景を堪能できる。中景には、入江の入り口付近の磯と崖とその上の常緑樹林が見え、遠景との対比が面白くもあり美しい。ただ、計画地そのものは、宅地分譲地として造成された経歴もあり、かなり荒れていた。しかも、この場所は住宅地のまっ直中にあって、狭い道路一つ隔てて戸建て住宅街とも接している。風景の美しいところをただ見るだけであれば、塔状の建物も良いかもしれない。しかし、計画地の荒れた風景を景勝地にふさわしく回復する為にも、また、この建物が周辺の住宅地に溶け込む為にも、建物が風景に対峙するのではなく、そのなかにひっそりと身を沈めるように置くのが良い。そのためにも、個室のスケールを外観に表して小刻みなスケール変化を与えるだけでなく、積極的にバルコニーを生活の場として、単に形態だけでなく、建物の表層に高い活動密度が現れることを期待している。ベンチとテント地を組み合わせた装置は、日よけ付きハイバックチェアとして座っても良いし、植木鉢置き棚として使っても良い。外部に向かっては、白い帆のように見え、人のすまいの在処を示している。

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location:山口県下関市彦島西山町 /Shimonoseki, Yamaguchi

completion date:2005.7

principal use:ケアハウス、グループホーム、デイサービスセンター/Nursing home

structural engineering:構造設計集団SDG

mechanical and electrical engineer::総合設備計画 / sogo consultants

contractors:大成建設広島支店

number of stories:地上3階 /  3 stories

structure:RC柱梁構造、壁構造

building area:1991.05

total floor area:4895.05

photography:北嶋俊治 kitajima toshiharu/archi photo