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フロイデ彦島

受賞:BCS賞 / 医療福祉建築賞2007 / 2007日本建築大賞ファイナリスト

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自然との触れ合いを楽しむ空間構成------風景に身を沈める
フロイデ彦島は老人保健施設であり、グループホーム(18室2ユニット)とケアハウス(個室46室6ユニット、内2室が夫婦対応)を複合した施設である。
この施設は、関門海峡を見下ろす崖の上に立つ。当初、台地の上に中層のタワーを建てる案も検討されたが、敷地のもつ可能性を最大限生かすために3層の建物を地形になじませながら配置した。

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イメージスケッチ

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帆型に張り出したテント布を日除けにしてベンチで くつろげるバルコニー。

奥に見えるのは関門海峡。

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​バルコニー詳細図

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敷地は下関市の端にあって本州と水路で隔てられた小島であり、その頂部にあるため、対岸に北九州市の重工業の工場群を遠望することができるだけでなく、最上階からは、日た装置は、日よけ付きハイバックチェアとして座っても良いし、植木鉢置き棚として使っても良い。

外部に向かっては、白い帆のように見え、人のすまいの在処を示している。

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コンセプトダイアグラム

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食堂。正面左の部屋は地域交流スペース。

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光にわを見る。

人の和をはぐくむ

施設から住まいへ

フロイデ彦島は、食堂などの共用設備もあり、言ってみれば老人たちが共同生活する寮である。大きい棟の一階に施設全体の共用諸室(食堂、居間)と地域施設(デイサービスセンター、防災拠点型地域交流スペースなど)が置かれ、その上の2層が居室である。小さい棟では3層とも居室が入っている。

 

居室は原則個室で、9室の個室が一つのケア単位を作り、それぞれが共用施設としてキッチン設備のある居間と浴室などを持っている。これらの諸室は2重の入れ子構造として配置されている。中庭と食堂とが絡み合った空間を核にして、その周辺に各グループの共用空間を配し、それを赤い壁で囲い込む。その外に白い個室空間が取り巻く。

ケアユニットは、管理の効率のためである。適正な料金と質の高いケアのために必要である。また、小グループは居住者が帰属感を抱き易く、心の安寧を得やすいというメリッ-廊下-グループ共用−中庭-施設共用」を明確にする。しかし、同時に小グループは、擬似的な家族を構成するために人間関係の緊張も避けられない。そこで、視覚的、心理的に他のユニットと触れ合える可能性を建築が提供することが必要である。

この建物全体で四つの中庭に面する各グループの共用空間に入ると、そこは赤い壁に囲まれ、中庭を透かして他の赤い壁に中にいる人達の様子や、館全体の活動の様子が目に入る。窓を明ければ話し声が聞こえてくる。同時に、中庭があることで、建物の中央部にある共用空間にいても、赤い壁に穿たれた開口を通して海の気配も感じられる。どこにいても人と自然の両方の気配が感じられる場が現出している。日本語の「気配が伝わる」という語は、ある種の空間の透明性を言う優れた用語と言ってよい。

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音響に配慮した地域交流スペース

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和室。

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模型写真

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階段条の光にわ

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ブリッジと連続したバルコニー

地域と共生する

フロイデ彦島の経営主体である社会福祉法人松濤会は高齢者施設と地域の共生に積極的に取り組んでいる。単に地域の高齢者のお世話をし、スタッフを雇用するだけでなく、地元の子供達を呼んで高齢者と時間を過ごす機会を作ったり、音楽会を開催して地域の人とともすごしたりと極めて多面的に地域に溶け込んでいる。透明性と閉鎖性を適度に兼ね備えた空間は、住民たちに公共施設以上に公共的な場を提供している。

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所在地:山口県下関市彦島西山町3-12-1
主要用途:ケアハウス グループホーム デイサービスセンター
建主:社会福祉法人 松涛会
設計
建築・監理:アプルデザインワークショップ
担当/大野秀敏 吉田明弘* 金子広明* 木村留美(*元所員)
構造:構造設計集団〈SDG〉担当/高橋一正 加藤征寛*泉美穂*(*元所員)
設備:総合設備計画 担当/若松宏 木村彰宏 上玉利直也 吉岡聡史
施工
建築:大成建設広島支店 担当/浅尾健治 大戸盛弘
空調・衛生:三晃空調 担当/中井文彦
電気:中電工 担当/上田彰
造成:田村建設 担当/冨田実
造園:四季の企画社 担当/矢野八洲徳
規模
敷地面積:5587.97m2
建築面積:1991.05m2
延床面積:4895.05m2
西棟1〜3階:378.68m2
東棟1〜3階:1280.01m2
建蔽率:35.6%(許容:60%)
容積率:87.6%(許容:200%)
階数:地上3階
寸法:最高高・軒高 18540mm
階高:東棟1階:3800mm その他:3200m
天井高:1階:2600mm 2・3階:2500mm
主なスパン:4500mm×4500mm
敷地条件:地域地区 都市計画区域内 第一種中高層住居専用地域 法22条指定区域 日影対象区域
道路幅員:東6m 北6m
構造
主体構造:鉄筋コンクリート造
杭・基礎:場所打ちコンクリート杭 一部布基礎
空調設備
空調方式:共用部:空冷ヒートポンプ式ビル用マルチエアコン 個室:空冷ヒートポンプ式ルームエアコン
熱源:電気
衛生設備:給水 直結給水方式
給湯:中央式+局所式
排水:敷地内分流方式
電気設備
受電方式:6.6kV普通高圧1回線受電
設備容量:750kVA
契約電力:350kW
予備電源:ディーゼル発電機
防災設備
消火:スプリンクラー消火設備
排煙:自然排煙
その他:自動火災報知設備 非常用照明 誘導灯設備 非常用放送設備
昇降機:乗用エレベータ(寝台用兼車いす用15人乗り 45m/min)×1台 (寝台用兼車いす用11人乗り 45m/min)×1台
工程
設計期間:2003年8月〜2004年9月
施工期間:2004年9月〜2005年9月
外部仕上げ
屋根:アスファルト防水
外壁:コンクリート打ち放し仕上げ 一部フッ素樹脂塗装
開口部:アルミサッシ(YKK AP) スチールサッシ(テクノナミケン)
外構
アプローチ:アスファルト舗装 コンクリート洗い出し 植裁 ネットフェンス
内部仕上げ
エントランスホール・風除室
床:天然御影石JB仕上げ
壁:PB t=12.5mm EP
天井:PB t=9.5+12.5mm EP
食堂・機能訓練室・地域交流スペース1・
一般共用部
床:メープルフローリング t=15mm
壁:PB t=12.5mm クロス貼り(東リ) 一部EP+木製(バーチ積層合板UC) ボーダー @200mm
天井:PB t=9.5mm+岩綿吸音板 t=12mm
地域交流スペース2
床:畳 縁甲板
壁:コンクリート打ち放し 撥水剤塗布
天井:PB t=12.5mm EP
地域交流スペース3
床:メープルフローリング t=15mm
壁:PB t=12.5mm EP グラスウールマット(ガラスクロス貼り)t=50mm+有孔珪酸カルシウム板 t=8mm EP
天井:コンクリート型枠外し グラスウールボード(ガラスクロス貼り)t=50mm ピン留め 一部LGS露出SOP塗装+有孔珪酸カルシウム板 t=8mm EP
個室(グループホーム・ケアハウス)
床:メープルフローリング t=15mm
壁:PB t=21+9.5mm(グラスウール充填)クロス貼り(東リ)
天井:PB t=12.5mm クロス貼り(東リ)
和室(ゲストハウス)
床:畳 ヤニマツ突板 t=5mm
壁:京ジュラク
天井:スギ柾合板目透かし張り 網代張り

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