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ハートホーム宮野

新建築2013年6月号掲載

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山口市における特別養護老人施設、ショートステイ等の機能を持つ老人福祉施設の計画である。

敷地内に既存の本館(デイケア、グループホーム等)があり、本建築を新館として計画した。 本建築は耐火構造による木造軸組建築で、内装においても木材を多く用いている。

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当時 国内最大規模の木造耐火建築物

・用途上耐火要求される老人福祉施設を、木造(軸組)耐火建築物で実現した。 主要構造部仕様について、(財)日本木造住宅産業協会(木住協)の木造一時間耐火認定を活用している。 平成18年に始まった木造軸組工法の耐火大臣認定により、大よそ100棟以上が竣工しているが、現在のところ、3000㎡弱の高齢者施設が同認定による最大規模であり、他構造との併用で10,000㎡を越える6階建て建築物の5・6層のみ耐火木造というものが最大規模である。 ・施設全体が上記認定を用いた木造耐火で、国内最大(約3,900㎡)の木造軸組耐火施設となる。 また、構造用資材のうち、国産木材の使用比率を全体の体積比で80%使用している。使用部位は、柱・梁等の横架材及び床・壁・屋根下地の構造用合板だけでなく、根太・間柱・垂木についても使用できる部分に積極的に国産材を採用している。 ・上記先端性等により、国交省による木のまち整備促進事業*(現:木造建築技術先導事業)の補助金対象事業に採択され、設計段階の平成22年度より継続して補助金助成を受けている。

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断面詳細図

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木住協認定の木造耐火認定の場合、規定により、構造体である木は石膏ボードに覆われ、完成後は表に顕われてこない。 そこで、内外装ともに、木造らしさを表現する手法を考えた。 外観は、この平面形の特徴を際立たせる様に、原則として直交する外壁を異なる仕上げとした。 つまり、既存棟との統一感をはかる白色の壁と木構造であることを外部に向かって示す木製ルーバーの壁の二種類を使い、雁行する平面形に従って交互に現れる様に配している。 外壁は全て木構造の認定耐火性能を満たすサイディングとして、白色の壁ではリブ付きとした。リブがあることによって光の反射が安定して、大きな壁面の平面性を際立たせることができる。 木製ルーバー壁の部分は、茶系色のサイディングを貼ったあとに、30cm浮かして木ルーバー(難燃塗装)を取り付けている。ルーバーの裏には、雨樋や設備配管、排気口などが隠されている。

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木ルーバーとサイディングが出会う隅部では、サイディングの小口にスチールのカバーを付け、サイディングの薄さを出すデザインとしている。

既製品の役物を用いる納まりに比べ、シャープで現代的なデザインとなっている。

同様な考え方は全ての開口部に及んでおり、アルミサッシの枠の外に、サイディングを収めるためにガルバリウム鋼板の額縁をつけ、端部は板厚だけで見せている。木製ルーバー部分では、この額縁が木製ルーバの面まで伸びて(奥行き30cm)庇と窓台の役割を担える様にしている。

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・南面に既存棟が建ち、敷地は不整形で、要求される延べ床面積も大きいことから、平面形を既存棟に対しておおよそ45度振り、外形を雁行させることで、敷地境界に沿って多数の三角形の空地を生み出し、環境面では緑化と採光、通風を得、平面計画ではケアユニットのまとまりを作り出す様にした。

・内部空間は雁行平面によってこの種の施設に多い老人施設然とした単調さを回避し、個室間のプライバシーへの配慮が可能となった。空間が中庭や廊下を介して刻々と変化する木造らしい内部空間である。

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・室内に自然の光と風を送り込み、季節の移ろいが感じられる装置として3つの中庭を設けた。交流があまり無いユニット間において(上下階においても)、中庭という中間領域を介することでお互いに気配を感じる構成となっている。

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既存棟(本館)と新館を見る

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2階平面図

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3階平面図

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配置図

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・同じサイディングの外壁でも中庭はがらっと変化し、鮮やかな色彩を施している。

・一部の色は室内にも使い、中庭と共用リビングに連続感が感じられるようにし、生き生きとした交流がはかれるようにしている。

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・室内の内装にも、木製建具やカウンターなどに木を使っている。

また、入居者が利用する床材は施主の要望である畳マットを使用し、畳の生活に長く馴染んだ入居者に落ち着いた空間を提供している。木構造特有の柔らかさが、畳床と相まって脚の疲れない床になっている。

・廊下の収納家具の合間の窪んだ空間は、木調の穏やかな内装として、入居者の様々な使い方を誘発し、自室でもなく共用リビングでもない第三の場所を提供している。

作品タイトル ハートホーム宮野新館

英文作品名 Heart Home Miyano

所在地 山口県山口市宮野下2996-1他

主要用途 老人福祉施設、寄宿舎

建主社会福祉法人  青藍会

設計─────────────────

建築 アプルデザインワークショップ

   担当/大野秀敏 吉田明弘* 江口英樹 外村和隆* 山本真也 田口佳樹 渡辺純也* Maurizio Devisi* (*元所員)

構造 MID研究所

   担当/加藤征寛 馬場貴志* (*元所員)

設備 総合設備計画

   担当/若松宏 岡正浩 兵道哲

監理 アプルデザインワークショップ

   担当/大野秀敏 吉田明弘* 江口英樹 渡辺純也*

施工─────────────────

建築 安藤建設 広島支店(現安藤・間)

   担当/本谷圭一 森脇亮介

木構造体 シェルター ハウジング山陽

空調・衛生・電気 中電工

規模─────────────────

敷地面積 (全体)2,976.30m2

建築面積 (増築)1,375.90m2

延床面積 (増築)3,875.55m2

1階 1,334.90m2/2階 1,313.90m2/3階 1,198.40m2

建蔽率 57.57%(許容:70%)

容積率 157.91%(許容:200%)

階数 地上3階

寸法─────────────────

最高高 10,594mm

軒高 10,036mm

階高 居室:3,150mm

天井高 居室:2,400mm

主なスパン 3,000mm×6,000mm

敷地条件─────────────────

地域地区 第2種住居地域、第2種中高層住居専用地域、法22条指定区域、都市計画区域内

道路幅員 西4m 南12m 北28.5m

構造─────────────────

主体構造 木造 一部鉄骨造

杭・基礎 深層混合処理工法・布基礎

設備─────────────────

空調設備

空調方式 ヒートポンプ方式

熱源 電気

衛生設備

給水 ポンプ圧送方式(受水槽)

給湯 ガス給湯方式

排水 公共下水道放流方式

電気設備

受電方式 普通高圧6.6kV60HZ1回線受電方式

設備容量 630kVA

予備電源 ディーゼル発電機 150kVA

防災設備

消火 消火器 スプリンクラー設備 自動火災報知設備 火災報知設備 非常警報設備 避難器具 誘導灯・誘導標識

排煙 自然排煙

昇降機 乗用エレベータ(寝台用兼車いす用15人乗り)×1台

工程─────────────────

設計期間 2010年4月〜2011年7月

施工期間 2011年9月〜2012年6月

外部仕上げ─────────────────

屋根 シート防水(アーキヤマデ:リベットルーフ)

外壁 窯業系サイディングボードの上ウレタン塗装(ニチハ:モエンエクセラード)

開口部 アルミサッシ(YKK AP)ガルバリウム鋼板枠取り付け

外構 インターロッキング 洗い出しブロック600×600 植栽

内部仕上げ─────────────────

居室/共同生活室/多目的ホール

 床 SKフロアたたみマットt=3(サンゲツ) 保護シート

 壁 ビニールクロス

 天井 ビニールクロス

エントランスホール

 床 フローリングt=15

 壁 ビニールクロス

 天井 ビニールクロス

主な使用機器─────────────────

給湯器 (リンナイ)

システムキッチン サンヴァリエ(LIXILサンウエーブ)

賃料・ユニット面積─────────────────

住戸数 89室

住戸専用面積 15.00〜18.00m2

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