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三共製作所 G&P棟・森海ホール

建築の計画
・設計に求められるもの 三共製作所グループ会社である株式会社 G&P の新工場には、 同時に複数のアルミボトル缶製造機械の組み立てが展開できる ように、効率的でかつ快適に働ける工場建築が求められた。また、 受注前の商談から、設計段階の打ち合わせ、製品の検品にいた るまで、世界各地から多数の顧客の来訪を迎え入れなければならない。業界トップ企業にふさわしい上質な環境で迎え、遠来 の顧客(東京駅から約2時間)に高い満足感を残せるような環 境が求められた。三共製作所の工場は、どこも広大な敷地にふ んだんに緑化がなされ、個性的な工場建築と敷石に覆われた豊かな外部空間が整備されている。本計画でもこの企業姿勢を継 承発展させることを目指した。
森の中の工場 三共製作所静岡製作所の敷地は三つの丘を跨いで広がっている が、既にそれぞれに工場が建設されている。新工場の敷地は、 最後の保留地ともいうべき第二工場が建つ東の丘の南半分の緑 地に求められた。ここには、クヌギとサクラを主として様々な 樹木が育成され、すでに立派に成長していたので、それを新工 場の魅力の一部とすることから設計を始めた。また、この場所は、 東名高速道路に接するので、工場の存在を通行車に強く訴える 絶好の場所でもある。そこで、建物を敷地の一番西側に寄せて 法面の際に配置することで、東側に雑木林を最大限残しつつ工 場の白い壁面を東名に向かって誇示できる位置とした。
明るい工場 昨今の工場は、冷暖房のための断熱性能確保と情報漏洩の防止、 そして電子機器を多用するために室内環境は閉鎖的になりがち である。そこで、工場の全長に渡る大きな高窓を設けて明るい 工場にした。ここにはガラスより経済的でありながら、中空層 を挟むことで断熱性と曲げ剛性を高くしたポリカーボネート製 のパネルを嵌めている。加えて社長の英断で床も含めて内装を 全て純白にすることになった。これによって油に汚れて黒ずん だ機械製作工場という旧来のイメージは完璧に払拭された。 構造は、長辺 90m、短辺 23.6m、高さ 15.6m の空間を入手が 容易な H 形鋼及び角形鋼菅を用いた鉄骨ブレース構造で構成している。

三共静岡製作所 全体図

左から、工場〜回廊〜森海ホール
赤い妻壁
工場は大型走行クレーンの条件から軒高 15m になり、東名に 対して強い存在感を主張している。日本の工場建築の多くは、 銀色や灰色、白色を基調色として、それに青色系の差し色とい うのが定番である。ここでは、基調色は第一工場に合わせて白 色のパネル張りとしつつも両妻面は深い赤色を選び、際立った 個性を演出している。
回廊
工場の建屋の平面形状は、90m×23.6m あり、長手方向に複数 の製造機械組み立てユニットが並ぶ。他の顧客からの組み立て ユニットの前を通らずに、訪問客を直接受注した組み立てユニッ トに案内するために壁面に4箇所の入り口を樹林側に設け、そ こに至る回廊の端に来客の車寄せを設けている。顧客は車寄せ で降り立ち、樹林を通り抜けて工場への入り口に向かう。回廊 は深い庇で樹下の様々な地被植物や低木に視線を導き、静かで 心落ち着く環境を形成している。顧客の来訪の無い時間は社員 の休憩時間の場所として活用されている。
森海ホール 回廊の中間に雑木林に突き出して東屋を設けた。ここは約 325 m²の八角形の平面形で、2階分の高さを与えた。周辺の樹木と響 きあう9本の Y 字型の柱が屋根を支え、大きなガラス面を通し て雑木林が部屋のなかにまで染み込んでくる雰囲気を目指してい る。内部の中二階は設計室に充てられているが、この棟の大半を 占める大きい空間は顧客に対する接遇施設として歓談や打ち合わ せの場所を想定している。加えて、休業日には音楽会の開催など を通して社会貢献の場としても使える様に計画した。これらの 様々な使い方に対応するために、L 字型の平面形をもち高さ 2.1m の可動衝立を二台備えている。この衝立は、二台を向かい 合わせで並べることで親密なスペースを作り出すことや、ジグザ グに並べて展示壁面とすることなどができる。同時に吸音/反射 装置として室内の残響時間の調整にも貢献している。森海ホール を特徴付けるのは何と言っても雑木林に囲まれて建つ四阿のよう な配置であるが、工事の都合上雑木林を一部伐採せざるをえず、 新しい樹木が成長するまでは全面ガラスを通して過剰な日光が室 内に入り込んでしまう。ガラス面には遮光と断熱と音響調整を兼 ねて窓面にローマンシェードを設置している。

配置計画図 緑化計画図
林床の美しい雑木林を魅せる
三共製作所静岡製作所は工場建設当初から緑化が積極的行なわれており、数々の彫刻とともに四季折々の植物の変化を楽しんで歩ける公園のようなキャンパスである。新工場には外回廊とともに大きな高窓に包まれたホールで森に開かれた構成となっており、来訪者を迎える森として絵画のような美しい躍動感のある森を目指した。新工場建設地には、今後の緑化を見込んで育てられていたクヌギやサクラの苗木が立ち並びすでに森となっていた。そこで既存の苗畑を生かしつつも、外回廊やホールから目に入りやすい林床のみどりを充実させることとした。林床は、森の地表部のことを指し、森の生態系を考える上でも重要な役割を担う。地域の生態系に配慮した森とすることで、植物だけでなく鳥や昆虫などにより変化に富んだ美しい森となって、工場に来訪された方々を歓迎する風景となることを目指している。

回廊から地域の特産品であるお茶の畑が見渡される。

森の部分 断面図

森海ホールの中空レンガ透かし積み壁。空調空気は床面から吹き出されレンガ壁の隙間から空調機に戻る。
スタインウェイのフルコンサートグランドピアノを備えて、 クラシック音楽などのコンサート開催をも目論む森海ホール は、四周ガラス張りで、森の中に佇むかの様な雰囲気をもつ。 音響的にもガラス面からの反射音はあたかも木立から返って くるかのような錯覚を生む。 室内音響設計の方針としては、室形状は幅 9m、奥行き 18m、天井高 6m の直方体に近い形であり、約 600 m³の室 容積から、満席時(可動椅子 120 人着席)の目標残響時間を 1.2 秒(空席時 1.6 秒)に設定し音楽ホールに匹敵する豊か な響きをベースとして確保した。空調リターンの役割を果た すレンガ壁は 25% 程度の開口率を有し、背後に空気層を設 けることで、表面の凹凸が音響的な拡散効果をもたらすとと もに、天井はトップライト部の金属ルーバー以外の面に穴あ き吸音板と岩綿吸音板を分散配置し、残響時間の周波数特性 が平坦となるように調整している。その上で、利用状況に応 じて日射遮蔽用のローマンシェードの吸音効果により響きを 抑制できるものとした。竣工後の計測では、空席時で全開時1.6 秒から全閉時 1.0 秒にまで設定可能である。 L字型可動衝立の内側を木製スリット構造の吸音面、外側 を金属製凸面状の反射面とし、コンサート時には衝立の配置 と向きによって拡散体または吸音体として機能し、反射音の 微調整に利用できるものとした。さらに、これにより、集会 や講演利用時には音声の明瞭性を十分確保できるとともに、 コンサート利用時には音楽の種類や演奏者の好みに応じた調 整にも利用できる。 コンサート利用時の可動客席の配置は、エンドステージ形 式とアリーナ形式の2種類が設定可能である。エンドステー ジ形式ではガラス面を舞台の背面として長手方向に客席列が 並ぶため、客席側方からの反射音が豊かとなり、音響的な空 間の広がり感は高まる。一方、アリーナ形式ではレンガ壁を 舞台の背面として客席が舞台を取り囲む形となり、高音域の 残響時間が若干短くなる傾向があるものの、演奏者と聴衆の 親密性が高い空間が形成される。コンサートの内容や客席数 によっていずれかの形式を選択することになる。

可動衝立:
L 字形状となっており、内側が 吸音面、外側を反射面としてい る。配置と向きによって反射音 の微調整に利用できる
天井の岩綿吸音板+穴あき吸音板: 三種類の吸音板を分散配置し、残響時 間の周波特性が平坦となるよう調整し ている。
中空レンガ透かし積の壁面: 25%程度の開口率を有する。背後に 空気層を設けることで、表面の凹凸が 音響的な拡散効果をもたらす。
アリーナ形式の座席配置: 演奏者と聴衆の距離が近く、 親密性が高く一体感がある。
「第一回 Foresta e Mare Concert 」の様子と森海ホールの音響設計

広域断面図

ホワイトで統一した工場内観
所在地:静岡県菊川市
建築設計:株式会社アプルデザインワークショップ
構造設計:小西泰孝建築構造設計
設備設計:株式会社設備計画
造園設計:SfG-landscape
音響監修:佐久間哲哉 (東京大学大学院新領域創成科学研究科准教授)
施工会社:平井工業株式会社
建築面積:3165.62 m²
延床面積:3159.38 m²
構造方式:工場、回廊 鉄骨造 2 階建て 森海ホール 鉄骨造 2 階建て
設備内容:空調方式 空冷ヒートポンプ式エアコン 給水 受水槽方式 排水 浄化槽方式 電気 高圧受電方式
設計期間:2016 年 8 月~2017 年8月
工事期間:2017年10月~2018年5月
竣工:2018 年 5 月